
「CAD/CAM冠は割れやすいからおすすめしない」。そんな評判を耳にして、治療に踏み切れずに迷っていませんか?保険適用で白い歯が手に入るのは魅力的ですが、安易に選ぶと「すぐに壊れた」「数年で変色して安っぽくなった」と後悔するケースも少なくありません。
CAD/CAM冠のリスクとデメリットを正しく理解することが、満足のいく治療への第一歩です。
そこでこの記事では、CAD/CAM冠で失敗する典型的なパターンに加えてメリットと、向いている人・向いていない人の特徴を徹底解説します。
CAD/CAM冠のメリット・デメリットをどちらも理解し、ご自身にとって最適な治療かどうかを見極める材料にしてください。
なぜ「CAD/CAM冠はおすすめしない」といわれるのか?

歯科治療を検討するうえで、「CAD/CAM冠はおすすめしない」ということを耳にしたことがあり、治療に悩まれている方も多いのではないでしょうか。ではなぜCAD/CAM冠はおすすめしないといわれるのかというと、「保険適用のハイブリットセラミック」の場合に、以下のようなデメリットがあるためです。
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- 再治療のリスクがあるから
- 経年劣化と変色が起きるから
- 詰め物の下で虫歯が再発する可能性があるから
それぞれ解説します。
再治療のリスクがあるから
CAD/CAM冠は強い力がかかると割れたり外れたりしやすく、再治療のリスクが高い素材です。金属のように粘り気がなく、ジルコニアのような硬さもないため、噛み合わせの負担に耐えられず破損してしまうことがあります。
とくに、寝ている間に歯ぎしりや食いしばりをする癖がある方の場合、その強い力によって短期間で割れてしまうケースも少なくありません。
再治療のたびに歯を削ることになれば、結果的に歯の寿命を縮めてしまう恐れがある点に注意が必要です。
経年劣化と変色が起きるから
時間の経過とともに素材が劣化し、黄色く変色してしまう点も、CAD/CAM冠の特徴です。レジン(プラスチック)素材には吸水性があるため、毎日食事をするなかで、水分やカレー、コーヒーなどの着色汚れをスポンジのように吸収してしまいます。
治療した直後は周りの歯と同じように白くてきれいでも、2年から3年ほど経つとツヤが失われ、くすんだ色になってしまうことが多いです。
天然の歯のような透明感を長く維持したい方にとっては、数年で見た目が悪くなる点は大きなデメリットとなります。
詰め物の下で虫歯が再発する可能性があるから
CAD/CAM冠の場合、被せ物の下で虫歯が再発する「二次カリエス」のリスクが、自費のセラミックに比べて高い傾向にあります。
CAD/CAM冠は経年劣化によってわずかに変形したり、毎日の歯磨きですり減ったりするため、歯と被せ物の間に目に見えない隙間が生じやすいです。その隙間から虫歯菌が侵入すると、被せ物の内部で虫歯が進行してしまいます。
外側からは気づきにくいため、痛みが出たときには神経を抜くような大掛かりな処置が必要になるケースもあり注意が必要です。
関連記事:CAD/CAM冠のデメリットは?CAD/CAM冠で後悔しないための注意点も解説
CAD/CAM冠を入れて後悔する典型的なパターン
CAD/CAM冠を選んで後悔するパターンとして多いのは、保険適用のハイブリットセラミックを選択したことによる、耐久性と見た目の劣化に関するトラブルです。主に以下のようなものがあります。
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- 奥歯に入れたらすぐに割れてしまった
- 歯との隙間から汚れが入り込み、口臭や歯周病が悪化した
- 時間が経ってツヤがなくなり、安っぽい見た目になった
ひとつずつ解説します。
奥歯に入れたらすぐに割れてしまった
噛む力が強くかかる奥歯をCAD/CAM冠で治療した結果、治療後すぐに割れてしまったという事例は非常に多いです。
奥歯は食事の際に体重と同じくらいの負荷がかかるといわれており、プラスチックを含むCAD/CAM冠ではその衝撃に耐えられないことがあります。とくに、一番奥の歯(大臼歯)は最も力がかかる部位のため注意しなければなりません。
歯との隙間から汚れが入り込み、口臭や歯周病が悪化した
CAD/CAM冠で治療をした結果、歯と被せ物の間にできた隙間に汚れが溜まり、口臭や歯周病が悪化してしまうことがあります。
CAD/CAM冠の素材は、表面に微細な傷がつきやすく、そこにプラーク(歯垢)が付着しやすい性質を持っています。毎日の歯磨きで汚れを落としきれないと、被せ物の周りの歯ぐきが炎症を起こし、出血や嫌な臭いの原因となるのです。
見た目の白さだけでなく、お口のなかの清潔さを保ちにくい点が、のちのちの後悔につながる要因となります。
時間が経ってツヤがなくなり、安っぽい見た目になった
CAD/CAM冠の装着から数年が経過し、表面のツヤが消えて安っぽいプラスチックのような見た目になってしまうことがあります。最初は周りの歯となじんでいても、吸水による変色や表面の摩耗により、次第に人工物感が目立つようになる状態です。
とくに前歯などの目立つ部分では、ほかの天然歯との色の差が明らかになり、人前で口を開けるのをためらうようになる方もいます。
「一生モノ」の美しさを期待していると、この劣化の早さにがっかりしてしまうでしょう。
関連記事:CAD/CAM冠の耐用年数はどれくらい?長持ちさせるポイントまで解説
CAD/CAM冠はメリットも多い

ここまで解説してきたデメリットばかりが注目されがちなCAD/CAM冠ですが、一方でミリングマシンを保有している歯科で受けられる「自費診療のセラミックのCAD/CAM冠」には、以下のようなメリットも存在します。
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- 短期間で治療が完了する
- 仮歯期間がないため感染リスクを抑えられる
- 天然の歯に近い見た目を実現できる
- 歯との適合性が高い
- 金属アレルギーのリスクが低い
保険適用ではなく自費診療による治療をお考えの方には、どれもCAD/CAM冠をおすすめできる理由です。詳しく見ていきましょう。
短期間で治療が完了する
CAD/CAM冠はコンピューターで設計して機械で削り出すため、従来の被せ物よりも短期間で治療が完了します。通常、歯科技工士が手作業で作ると1週間から2週間かかるところ、院内に設備がある歯科医院であれば、最短1日(即日)でセットまで完了する場合もあるのです。(ただし自費診療の場合が多いです。)
仕事が忙しくて何度も通院するのが難しい方や、大事な予定の前に急いで歯をきれいにしたい方にとって、このスピード感は大きな魅力といえます。
仮歯期間がないため感染リスクを抑えられる
1日で治療を終える場合、仮歯で過ごす期間がないため、削った歯への細菌感染リスクを最小限に抑えられます。
通常は型取りから完成までの期間に仮歯を装着しますが、その場合隙間から細菌が入り込むリスクがありました。
一方CAD/CAMシステムを用いることで、削ったその日のうちに被せ物を装着できれば、新鮮な歯の表面をパックするように保護できます。これにより、治療後の知覚過敏や虫歯の再発を防ぐ効果が期待できます。
天然の歯に近い見た目を実現できる
銀歯と比較すると、CAD/CAM冠のほうが天然の歯に近い自然な白さを実現できるのが大きなメリットです。保険適用の範囲内であっても、金属色ではなく白い素材を使えるため、口を開けたときに目立ちにくくなっています。
とくに下の歯の奥歯など、笑ったときに銀歯が見えるのがコンプレックスだった方にとっては、精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。自費のセラミックほどではありませんが、パッと見ただけでは治療跡だと気づかれにくい仕上がりになります。
歯との適合性が高い
コンピューターによる精密な設計と加工により、歯との適合性が高い被せ物を作製可能です。
従来の手作業による型取りや鋳造(金属を溶かして固める工程)では、材料の収縮などでわずかな誤差が生じることがありました。しかしCAD/CAM冠は、スキャンしたデータをもとに機械がブロックを削り出すため、設計どおりの形を再現しやすいです。
歯と被せ物がぴったりと密着することで、隙間からの虫歯菌の侵入リスクを減らすと期待されています。
金属アレルギーのリスクが低い
CAD/CAM冠は金属を一切使用しないため、金属アレルギーのリスクが極めて低いです。
銀歯などの金属製修復物は、長期間使用していると唾液に溶け出した金属イオンが体内に取り込まれ、アレルギー症状を引き起こすことがあります。一方CAD/CAM冠であれば、このような心配がありません。
すでにお口のなかの金属による肌荒れや不調に悩んでいる方はもちろん、将来的な健康被害を予防したい方にとっても、体に優しい安心な素材といえます。
CAD/CAM冠が向いている人と向いていない人の特徴
CAD/CAM冠にはメリットとデメリットの両方があるため、すべての人におすすめできるわけではありません。お口の状態や、治療において何を優先するかによって、向き不向きがはっきりと分かれます。
ここでは、CAD/CAM冠が向いている人と向いていない人の具体的な特徴を解説します。
CAD/CAM冠が向いている人
CAD/CAM冠による治療が向いているのは、以下のような人です。
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- 費用を抑えて白い歯にしたい人
- 金属アレルギーがある人
- 強度と耐久性を重視する人
- 短期間で治療を完了させたい人
詳しく解説します。
費用を抑えて白い歯にしたい人
費用をなるべくかけずに、銀歯ではなく白い歯にしたい人にとって、CAD/CAM冠は最適といえます。
自由診療のオールセラミックなどは1本あたり10万円以上の費用がかかることも珍しくありませんが、保険適用のCAD/CAM冠であれば、数千円から1万円以内で白い被せ物を入れられます。
「前歯や笑ったときに見える場所だけは白くしたいけれど、予算は限られている」という場合、保険の範囲内で見た目を改善できるCAD/CAM冠は、経済的な負担を軽くできる有効な手段です。
関連記事:CAD/CAM冠は保険が適用される?メリット・デメリットについて解説
金属アレルギーがある人
金属アレルギーの心配がある人や、体への優しさを優先したい人にも、CAD/CAM冠は向いています。CAD/CAM冠は、保険適用のハイブリッドレジンであっても、自費診療のセラミックであっても、金属を一切使用しない「メタルフリー」の素材です。
長年お口のなかに金属が入っていると、溶け出した成分が体に蓄積され、突然アレルギー症状を引き起こすリスクがあります。CAD/CAM冠を選ぶと、金属による健康リスクを未然に回避できるため、安心して生活を送れるようになります。
強度と耐久性を重視する人
強度と耐久性を重視する人のなかでも、とくに「自費診療のジルコニア(CAD/CAMシステムで作製)」を選べる人には向いています。
CAD/CAM冠の治療には、保険適用と自費診療の2種類があります。保険適用のCAD/CAM(プラスチック)は強度が低い一方、自費診療で使われる「ジルコニア」という素材をCAD/CAMで削り出す場合は、金属に匹敵するほどの非常に高い強度を得られるのです。
「銀歯は嫌だけど、絶対に割れない丈夫な白い歯がいい」という方は、自費診療のCAD/CAM冠を選択することで、その希望を叶えることができます。
短期間で治療を完了させたい人
CAD/CAM冠は、院内設備が整っている歯科医院であれば、1日で治療を終えることも可能です。そのため、仕事や学校が忙しく何度も歯科医院に通う時間が取れない人におすすめといえます。
CAD/CAM冠であれば、従来の治療法のように、型取りをしてから1週間以上待つ必要がありません。海外出張や結婚式などのイベントが直前に迫っていて、急いで歯をきれいに治したいというニーズに応えられる治療法です。
ただし、保険適用か自費診療かの選択によって治療期間に差が生まれますので、注意が必要です。以下の表で比較します。
| 保険適用のCAD/CAM冠の製作手順と期間 | 製作には、まず患者さんの歯の型を採った模型を歯科技工所へ送ります。 技工士は、この模型の上で専用のカメラを使い光学印象(デジタルデータ)を採得します。 そのデータをもとにミリングマシン(切削機)で被せ物を削り出すため、完成までに通常7日程度の期間がかかります。 |
|---|---|
| 自費診療のCAD/CAM冠の製作手順と期間 | 自費の場合は、患者さんの口の中を直接カメラで撮影して光学印象を採ります。 この手順により、間に模型を挟む保険診療に比べて、よりスピーディーかつ高い精度で被せ物を製作可能です。(最短で当日) なお、ジルコニアを使用する場合に限り、削り出したあとに電気炉で焼く工程が必要となります。 そのため、やはり7日程度の期間を要します。 |
保険診療のCAD/CAM冠は模型を経由するため精度がやや劣り、自費診療では口腔内を直接スキャンするため精度が高い、という違いがあります。
CAD/CAM冠が向いていない人
一方でCAD/CAM冠が向いていないのは、以下のような人です。
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- 歯ぎしり・食いしばりの癖がある人
- 噛み合わせの力が非常に強い人
- 歯周病が進行している人
- 一度の治療で長く持たせたい人
一つずつ見ていきましょう。
歯ぎしり・食いしばりの癖がある人
寝ている間に歯ぎしりをしたり、無意識に食いしばったりする癖がある人には、CAD/CAM冠は向いていないといえます。歯ぎしりによる負荷は体重の数倍ともいわれており、プラスチックを含んだ保険のCAD/CAM冠では、その衝撃に耐えきれずに割れてしまう可能性が高いためです。
どうしても白くしたい場合は、自費診療で強度の高いジルコニアを選ぶか、就寝中に歯を守るナイトガードの使用が必須となります。
噛み合わせの力が非常に強い人
スポーツをしている人や、もともと噛む力が非常に強い人は、CAD/CAM冠がすぐにすり減ったり欠けたりする恐れがあります。とくに、食事の際に最も力がかかる奥歯の治療では注意が必要です。
噛む力が強いと、被せ物だけでなく土台となる自分の歯にも負担がかかります。耐久性を最優先にするならば、見た目は劣りますが、柔軟性があり割れる心配のない銀歯やゴールドを選んだほうが、結果的にトラブルを避けられることもあるでしょう。
歯周病が進行している人
歯周病が進行していて、歯ぐきから血や膿などが出ている人には、CAD/CAM冠は不向きです。
CAD/CAM冠は、専用の接着剤を使って歯と化学的に結合させることで固定します。しかし、装着時に血液や水分が混じってしまうと、接着力が著しく低下してしまいます。その結果、治療後すぐに外れてしまったり、隙間から虫歯になったりする原因となるのです。
まずは歯周病の治療をおこない、歯ぐきの状態を健康にしてから被せ物を作ることが重要です。
一度の治療で長く持たせたい人
「一度治療したら10年以上は何もしなくていいようにしたい」と考える人には、保険のCAD/CAM冠はおすすめできません。素材の性質上、吸水による変色や摩耗といった経年劣化は避けられないからです。
数年ごとにやり変える手間や、そのたびに歯を削るリスクを避けたいのであれば、劣化する心配が少ない自費診療のセラミックやゴールドなどを選ぶほうが、長期的なコストパフォーマンスと満足度は高くなるでしょう。
まとめ
「CAD/CAM冠はおすすめしない」といわれる背景には、強度不足や経年劣化といった明確なリスクが存在します。しかし、すべての人に不向きなわけではありません。費用を抑えて白い歯にしたい方や、金属アレルギーの方にとって、CAD/CAM冠は非常に価値のある選択肢となり得ます。
大切なのは、目先の安さだけで選ばず、ご自身の「噛み合わせの強さ」や「美しさへのこだわり」に合わせて判断することです。後悔のない選択をするために、本記事の知識を持って歯科医師とじっくり相談し、あなたに最適な治療法を見つけてください。
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