審美性が高く保険が適用されるCAD/CAM冠の治療を受けようと考えている人も多いでしょう。
しかし、CAD/CAM冠は万能の治療ではありません。デメリットまで把握しておかないと、せっかく治療を受けたのに症状が悪化してしまうリスクもあります。
そこでこの記事では、CAD/CAM冠のデメリットを中心に以下の内容を解説します。
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- CAD/CAM冠とは?
- CAD/CAM冠の5つのデメリット
- CAD/CAM冠の保険が適用される範囲
- CAD/CAM冠の治療をおすすめしない人の特徴
CAD/CAM冠による治療を検討されている方の参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
CAD/CAM冠とは?
CAD/CAM冠(Computer aided design/Computer aided manufacture)とは、コンピュータを使用して患者の口腔状況に適した被り物・詰め物を作成し、虫歯などを治療する技術です。
今までは人の手で患者の歯の型取りをしてから被り物・詰め物を作成していたため時間とコストがかかっていました。しかし、技術の発展により短時間で技術力のない歯科医師でも作成できるようになりました。
また、銀歯のように金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がありません。さらに、セラミックよりも費用を抑えて自然な仕上がりで作ることができます。
2024年6月の改定によって、一定の条件つきでほぼ全ての歯に保険が適用されるようになりました。条件の例として、歯を抜いた部分やブリッジの治療では使用できません。また、患者の噛み合わせの状態によっては保険の適用外となってしまうケースも存在します。
CAD/CAM冠の治療を受けるときは歯科医師に口腔状況をみてもらい、治療方針を相談し指示に従うようにしましょう。
CAD/CAM冠のデメリット
CAD/CAM冠には、以下のようなデメリットがあります。
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- 歯の汚れや色がつきやすい
- 耐久性が低いため割れやすい
- 歯を削る量が多い
- 摩耗しやすい・外れやすい
CAD/CAM冠のデメリットを事前に把握しておくことで、治療を受けた後に「こんなはずではなかった」と後悔するのを防げます。それぞれみていきましょう。
歯の汚れや色がつきやすい
CAD/CAM冠用の材料は、歯の汚れや色がつきやすいです。長期間使用しているとハイブリットレジンの表面がでこぼこしてしまい、色素やプラークなどが付着しやすくなります。
そのため、コーヒーやワイン、カレーなど色の濃い食べ物・飲み物を頻繁に摂取する方は、歯磨きなどの食後のケアを怠らないようにしましょう。
また、加齢とともに唾液量が減るのも色素沈着の原因になってしまいます。唾液による浄化作用や殺菌作用、表面の保護作用がなくなってしまうからです。
そのため、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けたり、食べ物をよく噛んで唾液量を増やしたりといった対策をしましょう。
耐久性が低いため割れやすい
3つ目に、CAD/CAM冠は、セラミックと比較して耐久性が低く割れやすくなっています。ハイブリットレジンは柔軟で加工しやすい分、強度が劣るためです。
強い圧力がかかりやすい奥歯で治療を受けてしまうと、硬い食材を食べてしまったり、歯を強く噛み締めたりして、被せ物・詰め物が割れてしまうリスクがあります。また、強い力が加わったことで歪んでしまい、口の中で違和感を覚えてしまう可能性があります。
CAD/CAM冠の被せ物・詰め物が割れてしまわないように、歯科医師さんと歯の噛み合わせを確認してください。
歯を削る量が多い
CAD/CAM冠の治療は、歯を削る量が多くなってしまいます。被せ物を厚くし強度を出すために、ほかの治療方法よりも歯を削る必要があるからです。
また、歯を削る量が多いため神経に強い刺激が伝わりやすく、炎症を起こすリスクも考えられます。(歯髄炎)
一方セラミックや銀歯なら耐久性が高いため、あまり歯を削る必要はありません。そのため、患者の歯に大きな負担をかけずに治療することができます。
自然に生えている歯を削りすぎると、自然の歯自体の耐久性も低くなってしまうでしょう。口腔状況に合わせて適切な治療方法を検討してください。
摩耗しやすい・外れやすい
CAD/CAM冠は、摩耗しやすく外れやすくなっています。ほかの被せ物・詰め物と比較して耐久性が低いため、強く噛み締めると摩耗して歪みやすくなってしまうからです。
一度歪んでしまうと頻繁に外れるようになってしまうので、不用意に強い圧力をかけないようにしましょう。
外れてしまったときは無理にはめようとしないでください。外れてしまった詰め物・被せ物は清潔に保管し、歯科医院に相談しましょう。
CAD/CAM冠の保険が適用される範囲
2024年6月よりCAD/CAM冠治療は一定の条件さえ満たせば全ての歯が保険の適用範囲になりました。
具体的には、以下のとおりです。
必須条件 | CAD/CAM冠によって治療する歯の反対側で、上下に噛み合う歯があること |
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追加条件 (1or2のどちらか) |
1.CAD/CAM冠によって治療する歯と左右同じ側に、上下に噛み合う歯があり、治療の対象となる歯に負荷がかかり過ぎない。(画像の例3〜5)
2.CAD/CAM冠によって治療する歯と左右同じ側に、上下に噛み合う歯がないまたは義歯の場合、隣の歯が噛み合う。(画像の例6・7) |
画像・情報引用:「令和6年度歯科診療報酬改訂の主なポイント」3P|厚生労働省
患者の歯の噛み合わせによっては、CAD/CAM冠治療が受けられないおそれがあります。歯科医院に相談し、自分が保険を適用されている条件を満たしているかを確認しましょう。
関連記事:CAD/CAM冠は保険が適用される?メリット・デメリットについて解説
CAD/CAM冠の治療を受ける際の注意点
ここからは、CAD/CAM冠の治療を受ける際の注意点を2つに分けて解説していきます。
CAD/CAM冠の治療をおすすめできない人もいる
以下のような方の場合、CAD/CAM冠の治療をおすすめできないことがあります。
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- 歯ぎしり・食いしばりをする人
- 審美性を重要視している人
- お口の状態が深刻な人
それぞれ解説します。
歯ぎしり・食いしばりをする人
歯ぎしりや食いしばりを無意識におこなってしまう方は、CAD/CAM冠治療で被せ物・詰め物をしても短期間で破損してしまうリスクがあります。
そのため、歯ぎしりや食いしばりの癖を治してから治療を受けましょう。
費用を抑えたくて治療の後が目立っても構わない人であれば銀歯を、費用がかかっても自然な仕上がりにしたい人であればセラミックをおすすめします。
審美性を重要視している人
治療の痕跡をより目立たせたくない人は、CAD/CAM冠治療を受けるのを控えましょう。
CAD/CAM冠治療は費用面とハイブリッドレジンを使用している分、審美性はセラミックに劣ります。
特に前歯部分などよく人から注目されやすい部分なら、セラミックの方がより治療の痕跡をなくすことが可能です。
お口の状態が深刻な人
口腔状況が悪化している人は、CAD/CAM冠の治療を受けるのは控えてください。
歯の神経が死んでしまうほど重度の虫歯や歯が歯周病の場合、CAD/CAM冠治療だけでは十分な対応ができません。まず、根本的な歯科治療や歯周治療をおこない、口腔内の状態を改善する必要があります。
CAD/CAM冠は補綴治療の1つであり、深刻な虫歯や歯周病などの改善はできないため、注意しましょう。
やり直しの治療は一定期間できない
CAD/CAM冠の保険診察では、2年間同じ部位で治療を受けることはできません。
もし被り物・詰め物を紛失してしまったり無くしてしまったりした場合、仮歯をつけて過ごすことになってしまうので注意しましょう。
ただし、自費診療の場合は2年たたずとも治療を受けることが可能です。
同じ歯で何度も治療を受けてしまうと歯に負担がかかり過ぎてしまいます。患者の口腔状況や噛み合わせによって最適な治療方法が異なるので、歯科医院の指示に従うようにしてください。
CAD/CAM冠はメリットも多い
ここまでは、CAD/CAM冠のデメリットや注意点について解説してきましたが、反対にメリットも豊富にある治療です。そこでここからは、CAD/CAM冠のメリットを以下の6つに分けて解説していきます。
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- ほかの保険診療と比較して審美性が高い
- 虫歯再発リスクを抑えられる
- 保険適用のため治療費を抑えられる
- 金属アレルギーのリスクがない
- 噛み合わせへの影響が少ない
- 治療期間が短い
一つずつ見ていきましょう。
ほかの保険診療と比較して審美性が高い
CAD/CAM冠は、ハイブリッドレジンと呼ばれるセラミックとプラスチックを組み合わせた素材で作られています。この素材により、従来の銀歯と比べて色や形が自然です。
天然の歯に近い外観のため、前歯や笑ったときに見える部分の治療において、審美性の向上が期待できます。
虫歯再発リスクを抑えられる
CAD/CAM冠の治療によって、被せ物と歯の適合性が高まり、隙間が生じにくくなります。これにより、細菌の侵入を防ぎ、虫歯の再発リスクを抑えることが可能です。
虫歯の再発を防ぐことで、歯の寿命を延ばし、将来的な治療の必要性を減らせます。
保険適用のため治療費を抑えられる
CAD/CAM冠は保険診療の対象となっており、従来の銀歯と同様に経済的な負担を抑えて治療を受けることができます。
高額な自費診療を避けつつ、審美性の高い治療を選択することが可能です。
金属アレルギーのリスクがない
CAD/CAM冠は、金属を使用しません。そのため、金属を使用する銀歯のように金属アレルギーの心配がありません。
金属アレルギーを持つ方や、金属による歯茎の黒ずみを避けたい方にとって、安全で安心な選択肢といえます。
噛み合わせへの影響が少ない
CAD/CAM冠の素材は、天然の歯に近い硬さを持っているため、噛み合わせる相手の歯(対合歯)に過度な負担をかけません。
これにより、対合歯の摩耗や損傷のリスクを軽減し、口腔内全体の健康維持に寄与します。
治療期間が短い
CAD/CAMの技術を活用することで、被せ物の製作が効率化され、従来の治療と比較して治療期間を短縮することが可能です。
歯科医院によっては即日での被せ物の装着が可能な場合もあり、患者の方の通院回数や時間的負担を軽減します。
まとめ
この記事では、CAD/CAM冠治療のデメリットを中心に解説しました。CAD/CAM冠には、以下のようなデメリットがあります。
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- 歯の汚れや色がつきやすい
- 耐久性が低いため割れやすい
- 歯を削る量が多い
- 摩耗しやすい・外れやすい
一方で、審美性が高かったり、虫歯リスクを低くできたりといったメリットも豊富にあるのがCAD/CAM冠の特徴です。
もしCAD/CAM冠治療を受けたいのであれば、中葛西歯科にお問い合わせください。経験豊富な医師が、患者様のお口の状態に合わせた適切なアドバイスをさせていただきます。